世の中にバンドを題材にした漫画というのは数多くあると思うんだけど、その中で最も売れたのがBECKではないだろうか?僕も連載時から読んでいて、実家に全巻あるんだけど久々にGWを利用して全巻読み直してみた。
面白かった。面白かったのだけれども…これ今やったら売れないよなーと思いました。
こいつらマジで成功しねぇ
先日、もはや漫画は貴族の遊び。悪いこと言わないから趣味にするならYouTubeにしとけ。でも解説した通り、最近の漫画の傾向としてスピード感があげられる。なぜならインターネットの影響により情報への到達速度が早くなったことで、人がコンテンツに対する見切りが異常なまでに早くなったからだ。だから最近の漫画では、必ず1話目から食いつかせる要素を随所に配置し、いかに早く興味を持ってもらえるかを競い合っている。
ところがこのBECKという漫画。当時は気にならなかったが、今読んでみると異常なまでに進行が遅い。音楽漫画なのにコユキ全然音楽始めねぇ。音楽漫画の1巻で主人公音楽しないことある??歌わない演奏しない。2巻でようやくちょっと地元の音楽祭におっさんとバンドを組んで出場するけど、その後全然バンド組まねぇ。主人公がようやく主要メンバーとバンド組むの5巻。それまでライブはおろか、そもそも音楽パートがめちゃくちゃ少ない。ずっとギター壊されたり、いじめられたりいてるだけ。おと泳いでる。なに??5巻でようやく音楽漫画が始まる。ちなみに最近のバンドマンがロッキンユー!!は音楽に目覚めてバンドを始めてライバルが登場して4巻で全てを終えて終了しています。ロッキンユー!!が連載終了するまで音楽始めない音楽漫画ある??
BECKは読んだことない人にざっくり説明するとメジャーで大成功しているバンドを敵としてインディーズでほそぼそとやっているバンドが成功するお話なんだけど、こいつらマジで成功ねぇ。マジで。
BECKも今連載されてたら普通に音楽が始まる前に打ち切られてる。絶対。
展開がね、遅いんですよ。多分作者のハロルド作石さんがバンド音楽に理解があるからなんですけど、そりゃーリアルを求めたらそう簡単に成功するのもおかしな話。それを表現するためか、ちょっと評価されたらまた道を閉ざされる。一度フェスで有名になったら解散。三歩進んで二歩下がるどころか、匍匐前進でしか進まない。おせえ。恋愛で行ったら童貞と処女。どこまで行っていいかお互いがお互いに探り合って結局何も進まない。いや童貞と処女は一度進んだら一気に突っ走るから違うな。あいつらは一度性を覚えると2度と止まらない。友達に初めて彼女ができてからめちゃくちゃ悩み相談をされてたんだけど、一度ヤってから性に目覚めて大学をやめた奴がいます。ちなみに辞めて3ヶ月で別れてました。今は工場で謎の粉を作ってるらしいです。(合法)
当時邦楽ロック聞いてるのなんてひねくれもん
BECKを読んでた層のほとんどは邦楽ロックおよび洋楽好きの音楽にある程度詳しいそうなんですよね。BECKが売れたのはかれこれ10年以上前なんだけど、まだ今ほど邦楽ロックという分野が有名ではなく、一部のマニアックな人が聞いてるという印象だった。それもそのはずで当時はまだインターネットがそこまで広まっておらず、音楽といえばテレビの影響が強く、J-POP全盛期。テレビで特集される音楽はミスチル、グレイなどJ-POPばかり。
自分から聞こうとしない限り邦楽ロックに手を伸ばす人はいなかった。
つまり、BECKを読んでるやつらはほぼ全員ひねくれもの。クラスのみんなと遊ぶんじゃなく、家でギターを引いたり音楽を聞いたりしている、いわゆる引きこもり気質の周りと馴染めないやつらばかりだったんです。
そんなやつらなもんで、当然王道を評価するなんてダサいという価値観を持っており、当時から王道だったジャンプ漫画なんて当然避けます。クラスでジャンプの話題になれば、「俺マガジン派」といい、自ら会話をシャットダウンするいわゆる絡みづらいやつら。
だから王道的な、「友情、努力、勝利」なんてクソと思っている人たちなわけです。そこに現れた絶好のバンド漫画、それがBECKというわけだ。
メジャー音楽の否定
それが上記のひねくれものの好みにぐさりと刺さるんです。
だって僕らみたいなひねくれもんは、世間に評価されてるものを良いと言ってしまったら僕らの存在価値がなくなってしまうと思い込んでるんだから。だから評価されてるものは否定するし、評価されていないものを見つけ出す俺こそカッコいいとか思っちゃう。あ、ひねくれものの全員の総意みたいに言ってるけど、これ全部俺の話なので勘違いしないように。
当時で言えばミスチルとか、ラルクとか、AKBとか、そう言ったものを評価してしまったら僕らは価値がなくなってしまうんです。だってそいつらはすでにクラスの上位層が評価してるんだから。真っ向から彼らと勝負したって勝てっこない。
だから違う土俵、つまりマイナーなジャンル。そして行き着いた先が邦楽ロックだったわけだ。
だからこそ、そんな僕らをBECKは肯定してくれたんです。メジャーな音楽なんて金にものを言わせてオーディエンスを洗脳して、ドラマに出てる奴らが歌ってる音楽なんて糞食らえだ。BECKはそう言ってくれたんです。
エディくそカッケェ。
メジャーに嫌われても最後に成功する
そう。そんな僕らが求めてたのはまさにこんな物語。
メジャーにどれだけ潰されようとも、必死で自分たちの音楽をやり続ければ絶対に成功する。BECKはそんな僕らを肯定してくれた漫画でした。
まぁ現実はそう甘くはないでしょうが。
決めゴマがいちいちカッケー。
ということで結論。
BECKは当時ひねくれもんしかいなかった邦楽ロックファンが一番求めているものを表現してくれた。だからバンド音楽漫画としてもっとも売れた漫画となった。
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本日は以上。それでは。