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漫画を語る読み物マガジン

「ゴブリンスレイヤー」は一話目が名作すぎてその後の蛇足感が否めない

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よくあるじゃないですか。読み切りでウケていざ連載となったら面白く無くなっちゃう漫画。そーゆー漫画がなぜ連載だとつまらなくなるかというと、読み切りで物語が完成しちゃっているため、その後の展開が無理矢理つなげた形になってしまい、どうしても蛇足感が出てしまう。

 

読み切りの完成度が高ければ高いほど、その傾向は強く出る。

 

今日の漫画「ゴブリンスレイヤー」は、読み切りがウケて連載した訳ではないんだけど、あまりにも最初のエピソードが出来上がりすぎていて、まさに上記と同じパターンになってしまっている。もちろん、その後の話も面白いは面白いんだれども、どうしても最初のエピソードが素晴らしすぎて盛り下がってしまってるんです。

最初のエピソードまでは超名作

最初のゴブリンスレイヤーがなぜ名作かというと、王道ファンタジー漫画が見せない冒険の真実を強烈にぶち抜いたから。

 

王道ファンタジー漫画では、どれも雑魚キャラは簡単に倒して強敵に苦戦する。雑魚キャラは一コマで一気に倒される。主人公パーティの強さを表すための引き立て役にしかならないはずなんです。でも、本来そうやって王道の物語では簡単に倒される雑魚キャラでも、勇者を倒すことは普通にあるはずなんだよね。

 

ゲームのダークソウルとかをやる人ならわかると思うんだけど、ボスですらない敵に簡単に殺されることは本当によくある。慣れてないうちは本当に簡単にやられる。

 

そう。本来ならそれが普通なんですよ。新米のうちはどんな敵にでもやられる可能性がある。超簡単なバイトでも、働いた初日は他の全員が強キャラに見えるのと一緒。大抵そういう奴は慣れてくると、「こいつ雑魚じゃん」と思うんだけど、慣れないうちはどれだけ才能のあるやつでも、そいつにすら負けるのが普通なんです。

 

それをゴブリンスレイヤーでは、最初のエピソードでじっくり書く。雑魚キャラのはずのゴブリンの恐ろしさ、それによってどれだけの人が苦しめられてるのかをしっかりと書く。それが改めて多くの物語で雑魚キャラとされるゴブリンの怖さを読者に植え付けさせてくる。その完成度がめちゃくちゃ高かったんです。

 

雑魚の本当の恐ろしさ

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引用元:ゴブリンスレイヤー

 主人公の最初のパーティー。キャラデザもめちゃめちゃしっかりしてる。一番最初に主人公の女の子と出会ったことから見ても主要キャラになると思うじゃないですか。俺も思った。黒髪の女の子かわいいなーと思った。

 

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引用元:ゴブリンスレイヤー

 そんでしっかりそのキャラがどんな思いで戦いに出たのか。どんなバックグラウンドがあるのかをしっかり描く。こうされると僕らはこのキャラに思い入れができてしまう。応援したい気持ちが湧く。僕も頑張れーって思った。

 

そこからの…

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引用元:ゴブリンスレイヤー

 ズタボロにされる。

 

そんなん思わんやん。いや、流石に洞窟に入るところでのゴブリンナメ腐りっぷりから「あ…やばいかも…」とは思ったけど、流石にここまで凄惨に描くとは本当に思わなかった。

 

この衝撃はめちゃくちゃすごい。進撃でエレンが食われた時と同じぐらい衝撃があった。

 

王道のファンタジーでは雑魚として、“やられて当たり前のキャラ”とされてるゴブリンが、本当はめちゃめちゃ怖いものなんだと思い知らされた。

 

この洞窟までのストーリーは本当に名作だったんです。まさに王道ファンタジーでは絶対に描かれない部分。あ、冒険ってロマンがあるように描かれるけど、死ぬ可能性が十分にあるもんなんだよなって、多くの漫画で無視されてる部分をめちゃくちゃ意識させられた。

 

ところが…

 

雑魚キャラ退治専門だから興味を引かれた

そう。ゴブリンスレイヤーが序盤で一気に人気になったのって、この序盤の面白さと、それに加えて“雑魚キャラ退治専門”という設定でどうやって物語を成立させるのか?という部分が気になったからなんですよ。

 

なのにさ、なのに…

 

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引用元:ゴブリンスレイヤー

2巻ではもう敵にオーガが出てきちゃう。

 

違うじゃん。読者が求めてたのは“雑魚キャラ退治という設定でどうやって物語を成立させるのか?”じゃん。なにもうオーガ出してんの。それやっちゃったらそりゃー簡単に物語は作れるでしょうよ。普通に戦いのたびにより強い敵キャラを出せばいいだけなんだから。だけどさ、違うじゃん。

 

敵は基本的にゴブリンだけであってほしいってのが読者の希望だったはずだ。例えばずる賢いゴブリンが雑魚キャラなりに戦略を練り、ゴブリンスレイヤーを苦戦させるとか、そーゆー漫画を期待してたんですよ。

 

いやね。もちろん作者は何にも悪くない。作者は雑魚キャラ退治のゴブリンスレイヤーの生き様を描きたかったんだろう。たださ、ゴブリンスレイヤーというタイトルと、ゴブリンへの主人公の思い入れの強さから、敵は基本ゴブリンだと思うやん。

 

読み切りだったら本当に名作だった

この漫画。今でこそダークファンタジーの人気漫画とされているけど、もしも読み切りだったら本当に名作として語られただろうなと。

 

漫画って、設定を思いついて作られた漫画ストーリーを思いついて作られた漫画の2パターンあるんですよね。

 

その特徴は設定から入る漫画は序盤がめちゃくちゃ面白くてその後がつまらなくなってしまい、ストーリーから入るタイプは序盤は内容が見えてこないけど読んでいくうちに面白くなっていく。だから設定から入る漫画は読み切りの方が向いていることが多い。

 

例えばキングダムは完全にストーリーから入って(そもそも三国志が原作だし)、そのストーリーを成立させるためにキャラクターを作り、展開を作っていったパターン。

 

対して、「ゴブリンスレイヤー」は完全に前者。設定ありきの漫画。最弱モンスターゴブリンだけを専門とする最強戦士って設定。だから第一話。正確には最初の洞窟の話は本当に素晴らしい作品だった。最高に面白かった。

 

 ただ、どうしてもやはりゴブリンというモンスターとしては最弱な敵である以上、その後は普通のファンタジーになってしまった。

 

もちろんその後の展開も良質なファンタジー。「転生したらスライムだった件」とか好きな人は十分に楽しめる漫画だと思う。ただ、僕は雑魚キャラのゴブリンだけを敵とする新しいタイプの漫画を期待しただけに、その後がどうしても蛇足感を感じてしまいました。

 

あなたはどうでしょう?

本日は以上。それでは。

 

=告知=

こうやって漫画が好きな人と好き勝手に漫画を語れる場所を作りたいと思い、埼玉県の川越から10分の上福岡にバー店舗を借りました。漫画を語れるゆるいバーとして8月から営業していこうと思っています。おヒマな人はぜひ遊びに来てね!

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