Flappy-Magazine

漫画を語る読み物マガジン

「不滅のあなたへ」感想。この作者の思考は正直気味が悪い。

スポンサーリンク

最近着々と人気を上げてきている漫画がある。それが「不滅のあなたへ」だ。

 

 

なんかさ、この漫画気味が悪いんすよね。マジで怖い。なに?読みながら脳みその後ろの方が警戒音を出している感じ。飲み会でヤバイやついじっちゃってそいつの目の奥が笑ってない感じ。何を考えてるのかわからない怖さ。

 

アイディアの根元がわからない

不滅のあなたへ」は、地球外生命体?の不死の生物「フシ」が、地球の死んだ生物をコピーして、少しずつ地球に馴染みながら成長していく。という物語なのだけど、なのだけども…

f:id:jonnyhi0122:20190501053511p:plain

(不滅のあなたへより引用)

 

何者かによって ”球”がこの地上に投げ入れられた。

情報を収集するために機能し、 姿をあらゆるものに変化させられる

その球体は死さえも超越する。

ある日、少年と出会い、そして別れる。

光、匂い、音、暖かさ、痛み、喜び、哀しみ……

刺激に満ちたこの世界を彷徨う

永遠の旅が始まった。

これは自分を獲得していく物語。

amazonの内容紹介より引用) 

 

伝わるかなこれ。なんというか、気味が悪くないですか?背筋が凍る感じ。いや、ストーリーは面白いんだよ。ちゃんと面白い。というかすごい面白い。んだけども俺が怖いと感じるのは作者の思考。何をどうすればこんなストーリーを思いつくのかマジでわからない感じ。

 

例えばこの作者大今良時さんの前作「聲の形」は、耳の聞こえない女の子をいじめていた男が懺悔をしながら、その女の子と打ち解けていく様を描いたものだ。

 

これはわかる。「いじめ」というテーマは漫画として扱われがちだし、そこに「耳の聞こえない女の子」という要素を足しただけ。だから「聲の形」の設定やストーリーが作られる背景はなんとなくわかる。

 

ところが今回紹介している「不滅のあなたへ」は、ストーリーから設定まで、作り上げていく課程の思考回路が全く想像できない。だってこの漫画、主人公が人ではなく、冒頭で出てきた“球”。便宜上地球外生命体と書いたけど、もはや生命体かどうかすら怪しい感じ。主人公が動物の漫画は他にもあったけど、“球”って。“球”??一体誰が“球”に感情移入できるの??

 

もちろん“球”のまま話が進むのではなく、最初は狼になり、それが人になり、みたいに一応人として話は進むんだけど、序盤というかつい最近まで主人公言葉しゃべれなかったし。マジで、普段何食ってればこんな物語を思いつくのか想像もできない。

 

f:id:jonnyhi0122:20190501054859j:plain

(不滅のあなたへより引用)

 

主人公狼の方だぜ?そんなことある??

 

こんな漫画知らない

漫画ってさ、最近のものはそのほとんどがどこかの誰かが書いた物語の「焼き増し」なんですよね。大切な誰かを守るための戦いだったり、夢を追い求める冒険譚だったり。要は過去に売れた漫画の要素を少しだけ変えて別のストーリーに再構築する。

 

基本的にやってることはそれだけ。ほとんどというか、ほぼ全ての漫画家が1を2とか3にする作業をしているわけだ。みんなが誰かの真似をして、その中で少し新しい要素を足している。

 

それはもちろん悪いことじゃない。「芸術は模倣の連続だ。」とも言われてるし。売れるものを別の形で出してもっと売るというのは、ビジネスの世界では当たり前の手法だ。だからどの漫画もどこかで見たような構図やストーリーばかりになる。

 

例えば「ワンピース」は、ギリシャ神話が元ネタと言われているし、尾田栄一郎さん自身も「うしをととら」に影響を受けたとも公言していた気がする。幽遊白書なんかはまさにドラゴンボールの焼き増し。

 

ところがこの漫画、「不滅のあなたへ」は、様々な漫画家の中で、他が「売れてる漫画」などの模倣でストーリーを作ってるのに、一人だけ好きなように書いていて、それがめちゃめちゃに面白いという。0から1を作ってる。他の漫画家が必死に売れてる漫画を研究してなんとかそこそこのヒットを出してるのに、一人で面白いもんを思いついて好き勝手に作り上げて、それが面白いっていう。

なんなのこの人。小学生のサッカー大会に香川真司がガチで混じってきたみたいな感じ。

 

多分「聲の形」が売れたという実績がなく、講談社への最初の持ち込みがこれだったら絶対ボツにされてたと思う。才能に市場が追いつかない。だって、正直読みながら常に「何を見せられてるんだ?」という疑問が俺の頭の上にあったもん。

 

 破綻しているようなギリギリのバランス

今まで出てきている内容から、主人公の“球”、「フシ」の目的は、なにやら地球という星をコピーする?ことのようなんだけど、正直その辺がよくわからない。つまり、漫画自体の目的がわからないのである。10巻まで出てるのにだ。

 

例えば恋愛漫画なら、意中の相手と付き合うことが目的だし、冒険漫画なら目指しているものが明確にある。まぁこち亀とかそーゆー主人公自身の目的はないけど、読者への「笑い」を目的にしてる漫画ももちろんあるのだけれど、この「不滅のあなたへ」は、一応冒険漫画的な様相を呈しているのに、主人公がなにを目指しているのかマジでわからないのだ。

 

それもそのはずで、そもそもの設定として、「私は「それ」を地球に投げ入れ、観察することにした」と冒頭にあるように、まさに「フシ」の生き様を観察しているのだ。読者自身も。なにそれ??

 

マジでね、これだけだとストーリーにならないんですよ。起承転結が成り立ってない。

 

短編集のような長編

ではなぜ、こんなわけのわからない漫画が人気なのかというと、なんというか、短編集のような構成なんですよね。で、その短編それぞれはちゃんとストーリーが成り立っていて、起承転結ができてる。最初は「絶滅寸前の北極民が仲間を探す話」から始まり、「未開の部族の話」になり、「王族と商人の話」になり、そう行った短編のような話がだいたい2巻ペースで続く。

 

なんというかね、世界観が地続きの短編集のような漫画なんですよね。そこにフシが混じったらどうなるか?みたいな。

 

こんな漫画始めてみました。めちゃくちゃ面白いし、こんな漫画を思いつく作者が正直ちょっと気持ち悪い。思考回路が凡人のそれじゃない。サイコパス感をめちゃめちゃ感じる。だから僕はちょっと気味が悪いです。ちなみに漫画はめちゃめちゃに面白いです。ぜひ読んでみては。

 

※なるべく内容が伝わるようにコマをいっぱい貼りたかったんだけど、巻によって登場人物もなにも全く違うからマジで貼れるページがない。変に貼ると余計に意味がわからなくなる。要はそーゆー漫画です。でも面白いからすごい。

本日は以上。 それでは。