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漫画を語る読み物マガジン

「カカフカカ」の登場人物には人間らしさがない

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いや、漫画の登場人物に人間らしさを求めるなんてその時点でどうかしてると思うんですけどね。そんなこと言ったら、「ONE PIECE」のルフィに人間らしさがあるのかって話になりますし、「スラムダンク」の赤城は本当に高校生か?みたいな話になりますしね。

 

あくまで漫画はフィクション。それは間違い無いと思うんですが、それが許されるのはSFに近いような現実感の無い漫画だけじゃなきゃダメじゃ無いですか。例えば「名探偵コナン」で、アリバイがあったはずの犯人が腕を50m伸ばし被害者を殺害したとか言われちゃったらもう推理マンガとして成立しない。読者全員ポカーンじゃ無いですか。

 

つまり、人間らしさって、漫画というフィクションの世界でも必要ないものと必要なものがあると思うんです。その最も重要なものが感情面。感情面だけは、いくら漫画といえど人間に沿ってないと話が成り立たなくなるんです。

 

例えばクリリンを殺された悟空が「へークリリン死んだんだーそっかー」で終わってしまったら悟空っぽいっちゃ悟空っぽくもあるけど、怒らないと成り立たないんです。漫画の世界であったとしても。

 

枕詞はこんなところにして、本日紹介するのは、Kissで連載中の石田拓実先生の恋愛マンガ「カカフカカ」。深夜ドラマにもなって結構な人気作品。実写化も納得な面白さ。

 

 

ダンジョンシェアハウス

あらすじ。

就活に挫折し、現在フリーターの主人公、寺田亜希は、同棲していた唯一のよりどころだった彼氏にフラれ、家も無くなり友人のシェアハウスで暮らすことに。そこで再会したのは、中学の同級生で、初カレ兼はじめて「した」相手、本行智也だった。小説家になっていた彼はここ2年ほど小説が書けなくなりスランプ状況に、さらにそれが関係しているのか「たたない」という状況だった。ところが亜希に偶然接触したところ、なぜか反応が!!、絶対ヘンなことはしないという約束で、亜希は智也に協力を求められて添い寝をすることに。

元カレとただ添い寝をしているだけ、そんな状況「可か?不可か?」

引用元:wikipedia

 とまぁこんなあらすじなんですが、主人公寺田が引っ越してきたシェアハウス。寺田目線で考えると、完全にダンジョンなんですよ。自分のそれまで信じてきた常識が全く通用しない空間。

 

さながらダンジョンに迷い込んだ新米勇者。呪怨の家に間違って入ってしまった一般市民。ジュラシックパークに舞い込んだサム。地球に迷い込んだ宇宙人。

 

余談ですが宇宙人が地球に侵略に来ると「ワレワレハウチュウジンダ」っていうけど、よく考えればあれおかしな話で、「オマエラハウチュウジンカ?」が普通じゃない?だって宇宙人からしたら地球人の方がよっぽど宇宙人なわけじゃん。脱線した。

 

そう、この漫画「カカフカカ」は言うなればそういう異世界転生モノに近い。だって、シェアハウスに住む住人、主人公以外全員が人の心がないんだもん。

 

恋愛漫画なのに人の心がない

「カカフカカ」恋愛漫画なんですが、この漫画は、主人公以外に恋愛漫画に必須事項とも言える感情面の人間らしさが…ない。

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引用元:カカフカ

 まず第一の宇宙人がこの黒髪男、本行はED(インポテンツ)に悩んでいる男なわけだけど、どういうわけか主人公寺田にだけは反応するとのこと。

うん、まぁそれはいい。その設定は別にいい。

 

だけれども、だからと言って付き合ってもいない女にヘーキで股間を押し付けるのは普通に違う。できない。普通の人間ならそんなことしようと思っちゃいけない。

 

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引用元:カカフカ

 本行が「朝立」を経験したいから寺田に添い寝してもらえば治るんじゃないかと考え、相談するシーン。そんなことを普通にお願いできる神経マジでどうなってんの??心理が全く理解できない。

 

 普通言えるわけないでしょこんなこと。もし(この人に添い寝してもらえばEDが治るかもしれない!)と思っても、それを本人に言えるはずがない。人間なら。だってそんなこと言ったらどうなります?

 

それで承諾してくれる女がいるってんなら、俺だって片っ端から「添い寝して!」って言います。でも、もしそうしたらどうなりますか?そうですね。両手に鉄の輪っかがつきますね。

 

つまりこいつは倫理観とかではなく、犯罪という概念がない。こいつの思考回路はマジで人間のそれじゃない。肉食動物のそれ。目的を見つけたらゴールまで最短距離を行く。相手がどう思うかは一切考えない。(一応嫌がられたらやめる)

 

まぁまだいい。まだいいですよ。漫画に意味不明なキャラが一人ぐらいいるのは変なことじゃない。問題は、宇宙人がこいつだけではないことです。

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引用元:カカフカ

 

 本行よりもひどいのが一見まともに見えるこいつ。

 

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引用元:カカフカ

 どナチュラルに「サクッと抱かれなよ」というクズ。

このセリフさ、ムリヤリ系のAVでモブキャラがガヤでいうセリフじゃん。「あんま暴れないでさー。サクッとやらせてよー。」って。胸糞系。こいつがもう完全なるサイコパス

 

 

さらに… 

 

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引用元:カカフカ

 こいつもやばい。本行の小説を読んで感動し、作者に会いたいと思って当たれるツテを全て当たって本行の住むシェアハウスに転がり込むという行動力の鬼。というか普通にストーカー。本行の運命の相手は自分と信じて疑わない不思議ちゃん思考。

 

と、シェアハウスの自分以外全員がモンスター。怖すぎ。俺なら30分で出て行く。

 

主人公にしか感情移入させない設計

そう。この漫画はマジで主人公以外の登場人物全員が異常なんです。

 

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引用元:カカフカ

 自分の股間の反応を確かめるために急に抱きつかれるわ、結婚しなきゃ出てげと脅されるわ、すごく普通な寺田の思考をめちゃくちゃに論破されるわ、マジでダンジョン。倒さないと先に進めないRPGみたいな漫画。

 

なんですけどね…みんなおかしいんですが、すっごく読みやすいんですよね…。

他のキャラが「思考回路が謎」に設計されているおかげで、主人公の寺田に感情移入しやすい。だって、変な出来事の普通なリアクションをするのが寺田だけなんだもん。

 

読みながら寺田の迷いとか葛藤はすごいわかる。他のキャラの思考は謎。ドラクエの勇者対モンスターみたいな構図、だから物語の最初は寺田のことだけを考えて読めるんすよね。

 

ヤバいのには理由がある

モンスターと罵っておいて申し訳ないんですが、「やべーなこいつら」と思うながら読んでると、巻数が進むにつれてこのモンスターがなぜ生まれたのかのバックボーンがちゃんと書かれるんです。

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引用元:カカフカ

 カカフカカないで最もやばいサイコパスの長谷はイかれた両親の影響でかなーり歪んでしまったんです。しかもその両親のイかれ具合が過保護とかそういうんじゃなく、自分に都合の悪いことは全て自分のいいように解釈してしまう言葉が通じない系。

 

こういうのが詳細に書かれて行くので、徐々に徐々に他のキャラにも感情移入してしまう。長谷最初めちゃくちゃヤバいサイコパスだと思ってたけど、幼い頃の現実を逃避するために歪んでしまったのがわかって「長谷…幸せになってくれ…」ってなる。

 

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引用元:カカフカ

 アカリちゃんは読めば読むほどクソほど合理的なくせにいざ恋愛ごとになると合理的な行動ができなくなってどんどん可愛くなる。最初の不思議ちゃんキャラどこいったの?というぐらい。どんどん可愛いいい女になって行く。

 

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引用元:カカフカ

 上記はアカリちゃんの気持ちを知っていながら寺田が本行とやっちゃったことを知った後のシーンなんだけど、謝る寺田に対してアカリちゃんは「謝ることなんてない!」と感情で動かずにちゃんと話をしようとする。その姿勢がめちゃくちゃ好き。カッコいい。

 

本行はまだよくわからないけど、こうやって最初謎だった人物像が読み進めるうちに少しずつわかって行くんですよね。それがいい納得感を生みつつ、それぞれのキャラクターへの愛着に繋がる。

 

いちいちオシャレ

 さらにこの漫画の大きな魅力の一つが、表紙や扉絵がいちいちオシャレなこと。

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引用元:カカフカ

 

目次すらもオシャレ。ずらした幾何学模様が「可か不可か」というタイトルの不安定性を表現してるんですかね?そうだとしたらすごい。

 

漫画版の方が面白い

ということで先日実写版ドラマも最終回を終えたカカフカカ。変人だらけの世界観とそれを表現するための冷めた表情のキャラクター。

これがうまいことマッチしてる「カカフカカ」はやっぱり漫画版の方が面白いなーと思いました。実写版も面白くはあるんだけど、実写だとどうしても本行や長谷の異常性にとても違和感がある気がします。

こういった人間らしくない人間キャラは、漫画だと納得感があるけど実写だと大きな違和感になる。

 

ドラマで入った人は漫画版「カカフカカ」。ぜひ読んでみては。

 

本日は以上。それでは。