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「恋のツキ」が価値観に土足で上がり込んでくる

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世間一般的な幸せ感と、自分がいいと思う道。あなたはどっちを選びますか?と言う大多数が「世間一般的な幸せ!」であろう現代の価値観に馬鹿でかい石をぶち込む漫画、それがこの漫画『恋のツキ』です。

この漫画の作者新田章さんはいつもこーゆーことをする。前作の『あそびあい』では「なぜ人は好きな人としかセックスしちゃいけないのか」みたいなテーマで賛否両論を巻き起こしていたのに、今作でもまーた性懲りも無く人の価値観に土足で上り込む。好き。

 

“世間一般的な普通”を選ぶか“自分の求めるもの”を選ぶのか

まずはあらすじがこちら。

《前作『あそびあい』が「このマンガがすごい! 2015[オトコ編](宝島社)」にランクインした注目作家が、「女の浮気心」を生々しく描き出した最新作!!》 平ワコ31歳、彼氏と同棲中。そんな中「運命の出会い」が…!? 結婚はしてくれそうなマンネリ彼氏か、トキメキが止まらない超タイプ(でも高校生…)か。今さら一人になる勇気もない“適齢期オンナ”は、どの恋を選べば幸せをつかめるのか!?

 引用元:amazonの内容紹介より

キッツ。すげー簡単に言うと、31歳、彼氏と同棲中結婚も目前の状態で超タイプの高校一年生と出会うわけです。そんでもって、その高校生と縁あって遊ぶ機会ができてしまい、告白されてしまうわけだ。さー!ワコちゃん。どーする!?

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引用元:恋のツキ


31歳女性がその年になって今更高校生と付き合うとか普通に淫行だしあり得ない。彼氏を選ぶのが普通。だってそうすればその先の結婚、出産、老後の心配も解決。一方高校生なんか、結婚を真面目に考えるには何年待つの?と言う感じ。彼氏を選ばなかったら親兄弟、その他世間様にどんな目を向けられるのか。

 

本来なら悩む必要すらない問題。なんですが、作者の新田章さんはヘーキでそう言った“当たり前”をぶち壊してくるんです。

 

そう。この漫画は【“世間一般的な普通”を選ぶか“自分の求めるもの”を選ぶか】が大きなテーマ。ラフなタッチの絵柄のくせにめちゃくちゃ重たいテーマ。

 

浮気は悪いことなのか?

主人公のワコちゃん。めちゃくちゃ普通の女性です。

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引用元:恋のツキ

 人に気を使うし、将来の心配もする。世間的な当たり前を当たり前にこなす人なんですよね。本人自身、浮気する人なんて絶対に許せない。まさか自分がするなんて思ってもみなかった。なんですが…

 

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引用元:恋のツキ

 浮気します。やっば。クソじゃん。

 

と思うじゃないですか。なんだけど、僕が「この作者やっぱすげーな」と思ったセリフがこちら。

 

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引用元:恋のツキ

「浮気したいと思う相手に一生出会わない運が必要だ…」

これ。これが本当に素晴らしいシーン。超名言だと思う。

 

よく「一度浮気した男は次もする」なんてことを言うじゃん。もちろんそーゆー人もいるだろうけど、実際に浮気しちゃう人のほとんどはこれだと思うんだよね。浮気をしようと思ってしたんじゃなくて、浮気してでも恋愛したいと思う相手に出会ってしまっただけ。

 

言い訳のように聞こえるけど、言ってみれば、一緒にスマブラをやりたい相手と出会ったときに、友達に「俺以外とはスマブラはやっちゃダメ」と言われたところで、じゃあ我慢できるのか?って話でしかないと思う。「スマブラは私としかしちゃダメだ!」なんて、独占欲で相手の楽しみを奪うだけじゃん。

 

人間生きてれば、いろんな人に会うわけだ。そんで、その中で一緒に酒を飲みたい相手、一緒にスポーツをしたい相手、一緒にゲームをしたい相手。色々いる中で、一緒に恋愛をしたい相手もその中の一つのカテゴリーでしかないと思う。じゃあそのそれぞれのカテゴリーごとに一人に絞らないといけないのか?と言うのはかなり理不尽な話だ。

 

恋人なんて結局は、お互いがお互いの恋愛をしたい相手のカテゴリーにハマっただけなわけで、そのカテゴリーに入る人は他にも絶対にいるわけです。

 

なので僕個人としては、“恋人同士であればもしお互いが自分以外のそーゆー恋愛をしたい相手と出会ってしまったときにどうするべきなのか?”は考えておかないといけない部分だと思うんですよね。それをする勇気がない人が「浮気は悪」と言う風潮を作り上げて一方的に制限する空気感になってるんじゃないでしょうか?どうでしょうか?

 

この漫画はそう言う“世間的な当たり前”は正しいのか?をめっちゃ語りかけてくる。

 

世間的に当たり前ではない“自分の求めるもの”を選んだ先

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引用元:恋のツキ

「あなたとの相性は良かった。

 でもそれは、4年分の相性でした。」

これも本当に素晴らしいセリフ。相性というものに期限をつけた人、新田章さんが初めてじゃない?

 

でもよく考えたら普通のことなんですよね。相性っていうと一生のもののように聞こえるけど、5分しか耐えられない相性の人もいれば、1週間で嫌いになる相手もいる。よくよく考えれば相性に期限があるのは言われれば「確かに」と思う。

恋人として関わるのには4年分の相性という表現はめちゃくちゃ凄い表現だと思った。

夫婦でも本来愛し合って結婚したはずなのに喧嘩ばかりしてる人。よくいるけど、あれは相性の期限が切れたんだな。 

 

こうしてワコちゃんは彼氏を捨て、高校生と付き合うと言う世間的にみたらやばい道を選ぶ。

 

物語はそこからワコちゃんが選んだ“世間的にみたらやばい道”での数々の問題にぶち当たります。その辺りはコミックス読んで。

 

「恋のツキ」が僕らに突きつける価値観

人はみんな世間様に対して、みっともないと思われないように、世間様から見て恥ずかしくないように一生懸命生きていくわけです。

 

でもさ、世間様って誰ですか?世間のみんな?世間のみんなにみっともないと思われて、一体どんな問題が起きるんでしょうか?

 

世間様によく思われたいとか、世間様にカッコがつけたいとか、そんなことのために僕らは生きているんでしょうか?

 

自分がやりたいと思っても世間様のせいでできないことはめちゃくちゃある。だけど、世間様にによく思われるためにみんながしていることをみんなと一緒にしたところで、世間様は僕のために何もしてくれないよ。

 

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引用元:恋のツキ

「つまんない大人みたいなこと言わないでよ…」ニコッ

じゃねーよ。笑顔で人の心に刃物みたいなセリフ突き立てるな。サイコパスか。

 

やりたくない仕事を予想もできない未来のためにひたすら頑張るのか。それとも金よりも好きを優先させるのか?

 

みんなが当たり前にやっていることをやることが、本当に自分にとっても幸せなのか?この漫画はそんなことを読者にぶつけてきます。めちゃくちゃ面白いし、めちゃくちゃ価値観に土足で上がり込んでくる。

 

良作すぎてもっともっと描きたいんですが、長くなってきたのでこの辺で。この記事で少しでも気になった人はぜひ読んでみてください。めっちゃおすすめ。

 

本日は以上。それでは。