Flappy-Magazine

漫画を語る読み物マガジン

「ランウェイで笑って」のワンシーンを見るだけで涙腺がぶち壊れる

スポンサーリンク

素晴らしいものは素晴らしいと言ってクソなものはクソと言わなきゃいけないと思うんですよ。特に僕らのような、人様の作品のレビューを多くの人に見える形で公開してる人間は。

 

だって、もし僕が何でもかんでも、これは素晴らしい。これも素晴らしい。こっちも素晴らしいって言い続けていたら、僕の言葉にはなんの力もなくなってしまうじゃないか。

 

例えば、何を食べてもうまいうまいという人が、この店の料理はめっちゃうまいよ!って言ったところで、それを聞いた人は本当に美味しいのかどうなのか、全く判断できなくなってしまう。

 

だから以前書いた

www.flappy-magazine.com

 こーゆー記事みたいに、悪いものを悪いと正直に書く。例えその作品のファンが悲しもうと、そうしないと、僕のレビューになんの意味もなくなってしまうんです。

 

今日紹介する「ランウェイで笑って」は本当に素晴らしい漫画で、この漫画のおかげで正直とっつきにくさがある職業漫画も読むようになった。今日はこの漫画を全力で、この記事を読んだ人全員にオススメしたい。

 

人生をかけた夢を、諦めないといけない

よく、「努力すれば夢は叶う」なんていうじゃないですか。でもね、そんなのは大間違いで、夢を叶えるために必要なカードを持っていないとどうしたって夢は叶わないんです。ポーカーでどれだけカードを集めても、必要なカードが揃っていない限り役にならないように、エグゾディアの右手左手右足左足をどれだけ集めようと、頭部がないと勝ちにはならないように、職業にはそれぞれに必要なカードがある。

 

例えば医者になるためには、“頭の良さ”というカードだけではなく、医学部に通うための“莫大な授業料”というカードが必要になる。他にもスポーツ選手なんかだと明確に努力だけでは手に入らないカードというのは多い。ちなみに僕はグラフィックデザイナーを目指していたけど、どうしても色彩的なセンスを持っておらず割と簡単に諦めました。

 

「ランウェイで笑って」の主人公千雪は小さい頃からパリコレモデルになることを夢見てきた女の子。いや、夢という言葉では安っぽいと言えるほど、そのために生きてきた。

f:id:jonnyhi0122:20190709012011g:plain

引用元:ランウェイで笑って

 ところがね、彼女はパリコレモデルになるために“絶対に必要なカード”を持っていなかったんです。

f:id:jonnyhi0122:20190709014134g:plain

引用元:ランウェイで笑って

パリコレモデルも上記の例と同様に絶対に必要なカードというものがある。“スタイルの良さ”や“ウォーキングの技術”では足りない。パリコレモデルには“服を美しく見せるための身長”というカードが必要なのだ。

 

この時点で僕の涙腺はウルウルくる。世界ウルルン滞在記にはなんの感情も揺るがないけど、頑張ってる人の頑張りが報われないと本当に悲しくなる。地下アイドルが人気になるのもそういう頑張ってる女の子を成功させたいおっさんによるもの。僕もでんぱ組のみりんちゃんの頑張ってる姿を見ると本気で応援しちゃう。全然可愛くないけど。

 

f:id:jonnyhi0122:20190709014658g:plain

引用元:ランウェイで笑って

彼女は身長というカードを持っていなかったせいで、モデル事務所からクビを宣告されてしまう。

 

それはそうだ。はたから見たら役が揃っていないのにフルハウスを宣言しようとしてるよなもの。頭部を持っていないのにエグゾディアを召喚しようとしてるようなもの。

絶対に必要なカードを持っていない以上、周囲が反対するのは彼女のためでもある。

 

カードがなくても勝負する

f:id:jonnyhi0122:20190709014955g:plain

引用元:ランウェイで笑って

 

「一生、叶わない夢 追いかけるつもり」

「叶える!一生あるんだもん」

 

さらっと書いてあるけど、この覚悟をするのに千雪はどれだけ悩んだんだろう。

 

彼女はこの覚悟をすると同時に、育人と出会う。

f:id:jonnyhi0122:20190709015257g:plain

引用元:ランウェイで笑って

 育人もまた夢であるファッションデザイナーを目指すためのカードを持たない人だった。カードを持たないもの同士がお互いのカードを補い合うことでなんとか偶然が重なり、千雪は東京コレクションに舞台に立つ。

 

千雪の思いに涙腺がぶち壊れる

この3ページが今見ても涙腺がやられるんですけども、東京コレクションの舞台に立った時の千雪の回想シーン。

f:id:jonnyhi0122:20190709015907g:plain

f:id:jonnyhi0122:20190709015911g:plain

f:id:jonnyhi0122:20190709015914g:plain

 引用元:ランウェイで笑って

 

なぜ千雪がそれほどまでにパリコレモデルにこだわるのか?

 

そんなの知らない。

ずっと

ずっと

ずっと

そうやって過ごしてきた。

 

泣く。

 

泣いちゃう。

 

このシーンだけで3日泣ける。

 

もちろんここまでの話は物語の冒頭。2巻までの話。

 

まだまだ世界最高峰のパリコレには程遠いけど、なんども無理と言われ続け、なんども否定され続けてきた夢が、ようやく一筋の光だけでも見えてきた。そう思えるだけで僕は千雪を全力で応援したくなる。

 

感動の作り方がうますぎる

作者の猪ノ谷言葉先生。まだ新人で連載作品としては「ランウェイで笑って」がデビュー作だそう。

なんですけど、この作者マジで、感動の作り方がうますぎるんですよね。

 

f:id:jonnyhi0122:20190709021429g:plain

f:id:jonnyhi0122:20190709021433g:plain

引用元:ランウェイで笑って

 こちらは家が貧乏なためにずっと夢を言えなかった育人が初めてデザイナーとして給料をもらい、ようやく家族に伝えられるシーン。

 

文章にしてしまうと、言ってしまえば漫画ではよくある展開なんだけど、「ランウェイで笑って」では、このシーンを描くためにひたすら前振りをし続ける。

貧乏なために夢を諦めようとする育人の姿だったり、それを密かに知りながら育人が自分を抑える姿が許せない兄弟だったり、それでも貧乏なために言えない周りの人だったり、そういったものを数話かけて描く。そういった話をうまくまとめて時間をかけて作る。

 

だから、たったこれだけのシーンでもめちゃめちゃに感動する。

 

とっつきにくファッション業界の話だけど、全員に読んでほしい

正直少年漫画で職業の話ってそれだけでとっつきにくい印象がある。

だって、他の連載では熱いバトルとかスポーツとかしてるのに、当然仕事の話だ。アクロバティックで迫力のあるシーンや豪快なシーンもない。

だけど、仕事の話をめちゃめちゃ熱く、誰にでもわかりやすく、胸に刺さるように作られているすごい漫画です。

 

本当に全員に読んでほしい漫画です。

ぜひ読んでください。本日は以上。

それでは。